COLUMNコラム

【日本の文化】「お通し」が持つ本当の意味

居酒屋などの飲食店でビールなどのアルコールを注文すると、高い確率で「お通し」が提供されます。これまでは当たり前のこととみなされてきましたが、インバウンドの増加とともに、注文してもいないものが出されることに疑問を呈する声が高まっています。今回は、飲食店の「お通し」を取り上げ、その本来の意味、時代に則したありようについて解説しましょう。

「お通し」とは飲食店のシェフからのご挨拶

飲食店でアルコールドリンクを注文すると、簡単な料理が出されることが少なくありません。一般には「お通し」のほか、「突き出し」や「口取」と呼ばれることもあります。すぐに出せるよう作り置きされているケースがほとんどで、ドリンクを注文した直後や席に着いた際に提供されます。

「お通し」が無料サービスではないことは、多くの方が知っているところ。そのため、注文していない料理の代金を請求されても、「注文していないものが出された」とクレームが出されることはほとんどありません。

確かに、「お通し」はチャージ料のようなものと捉えられることが多く、飲食店側にとって客単価を上げる目的もあるといわれていますが、本来、注文された料理を出すまでの間をもたせるおつまみとしての役割があるのは知っておきたいところです。

飲食店で注文すると、ドリンクがはじめに出されます。ところが、注文された料理を提供するまでには一定の時間がかかってしまうため、すぐ出すことができる「お通し」を用意することでよりお酒を楽しんでもらいたいという、いわば気配りとしての一面があるというわけです。

ところが、「お通し」が形骸化してしまっていることが多いのも事実。お客様が手持ち無沙汰な時間を過ごすことを回避するためのものであるはずなのに、単に“出来合いのものを出す”慣習となっているケースが少なくないのです。

本来、「お通し」とは、キッチンの外になかなか出ることができないシェフにとってご挨拶のようなもの。頼まれてもいないものをお客様に提供する以上は、名刺代わりとなるようなこだわりが感じられるものをお出ししたいところです。

飲食店の「お通し」に求められるのは柔軟さと適切な値段


実際、インバウンドの増加に伴い、「お通し」の文化を知らない外国人客とのあいだで、トラブルが発生するケースも少なくありません。そうした状況を受けて、最近では「お通し」をキャンセルできたり、外国人に対してはじめから「お通し」を提供しない飲食店も増えてきているようです。

もし、従来のようにすべてのお客様に「お通し」を提供するのであれば、日本の慣習であることをきちんとお伝えしたり、メニューに「appetizer for everyone」などと値段とともに表記したりして、納得してもらったうえで提供するなどの気遣いが必要でしょう。大切なのは、楽しい時間を過ごしてもらうための配慮です。

また、あまりに高価だと反発を招きやすいため、「お通し」の値段設定も重要でしょう。都内の飲食店の場合、300円から399円としている店舗が半数近くを占めているというデータがあります。他の料理が注文されることを前提として、適正な価格を設定したいものです。

お客様の顔が見えるお店づくり

「お通し」は決して悪弊というわけではありませんが、現代の感覚からすると、やや時代錯誤な面がないともいい切れません。「お通し」という形で挨拶が必要な店舗デザインではなく、キッチンから直接お客様とコミュニケーションできるような「人間中心設計」による店舗デザインが、ベストなソリューションとなる場合もあります。クリアデザインでは、店舗のコンセプトごとに最適な内装デザインをご提案。新店舗出店をお考えのオーナー様は、ぜひお気軽にご相談ください。