COLUMNコラム

「取引先というよりは、一緒にモノづくりを楽しむ仲間」− 訪れる人を笑顔にする空間ができるまで

「デザイナーの意図を汲み取り、阿吽の呼吸で具現化してくれる内装屋」として、横浜にある飲食店「GRINHOUSE Daily dining(グリンハウス デイリーダイニング)」のインテリアの設計・施工を行ったClear design(クリアデザイン)佐藤洋輔。笑顔絶えない空間が誕生した背景にあったのは、モノづくりと人の想いに対する真摯な姿勢への共鳴でした。GRINHOUSEの加藤修さんとともに、プロジェクトを振り返ります。

ただ、施工や図面を書くだけではなく、自分の方向性を一緒に考えてくれたパートナー


▲横浜に店を構えるGRINHOUSEの外観

加藤:GRINHOUSE Daily dining(グリンハウス デイリーダイニング)の建築には3者のプロに携わってもらいました。全体を統括するデザイナー、建築会社、内装業者としてClear design(クリアデザイン)。建築の部分は相見積もりをとって価格軸でも検討しましたが、特にこだわりたかった内装はクリアデザイン様で一社決め打ちでした。

佐藤:ありがとうございます。デザイナーさんからの紹介だったのですよね。
その期待を裏切らないように……と、プレッシャーも感じました。

加藤:デザイナーは設備面には強くありません。クリアデザインさんはデザインに関する造詣が深いだけでなく、建築もされるから設備にも強い。設備が意匠に関わるような部分においてもお力添えいただけると思いました。

佐藤:今回は、新築で店舗を建てるところからスタートする大きなプロジェクト。内装屋として携わるとはいえ、最初の建築設計の段階から意見をさせてもらいました。電気配線や排水など、建築の段階で予測しておいた方がいいことがたくさんあると思いましたので。

加藤:実際にお店がスタートして、「ここにコンセントが欲しい」「配管が欲しい」となった際に、追加の工事が行いやすい。運営のしやすさを感じています。

佐藤:配管などで言えば見えない部分ではありますが、出来上がった空間の意匠を壊さないように、また店自体の運営がスムーズになるようにとルートを確保しておきました。

オーナーさんの頭の中を具現化する仕事

佐藤:今回は建物を作るところからスタートしたので、自由度がとにかく高いプロジェクトでした。
その中でも加藤さんがずっとブレないイメージをお持ちだと感じることも多く、凄いな、と思っていました。

加藤:僕が叶えたかったイメージは「オープンなお店である」ということ。開放的でことこそ、人の流れが作れると思っているんです。エントランスの広さやバーカウンター裏がオープンする設計、そして2階のテラスもアピールポイントですね。フロアごとに雰囲気を変えてほしいというのも佐藤さんにオーダーしました。雰囲気は違うけれど、統一感を損なわないように、とも。

佐藤:そのご希望に対しては、床材や壁の色で個性を出し、フロアごとの個性を出しました。

加藤:様々なタイプのお客様に、様々なシチュエーションで楽しい時間を過ごしてほしいと思ったんです。

佐藤:大まかな空間デザインは、まずデザイナーさんの意向を自分の中に落とし込み、それに加えて、オーナーである加藤さんと対話を重ねることで イメージを練り上げていきました。僕が大事にしているのは、オーナーさんのイメージを具現化すること。そのイメージの根本にある「想い」をきちんと聞かないと、細かな部分でズレてきてしまうと思うんです。

加藤:これが「佐藤さん、クリアデザインでよかった」と思う理由の一つ。目指すところを事細かに理解しようとしてくれて、きちんと共有ができていたことで、楽しみながら作り上げることができました。

佐藤:加藤さんは元々同業(インテリア業界の従事者)ということもあり、プレッシャーでもありましたが、かえってそれが刺激になり、僕もとても楽しかったですね。モノの良さをわかってくださるため、壁の塗料一つで盛り上がりました。

加藤:きっとほとんど人が気づかないようなところまで、僕らの楽しみとしてこだわりました(笑)。僕を含め、作っている本人たちが一番楽しかったんじゃないかな。一緒に楽しめたからこそ、信頼もどんどん厚くなっていきました。

佐藤:嬉しいですね。僕は「GRINHOUSE」というこの店の名前が大好き。そして、本当にぴったりだなあと思うんです。

佐藤:「笑顔になる」ってワード、僕もめちゃくちゃ好きなんですよ。

加藤:いろんな人にそれぞれの楽しみ方で、笑顔になっていただきたいと思いました。だから、店内の雰囲気にバリエーションをもたせたかったのです。

余白こそ、居心地の良さとオリジナリティをつくる

佐藤:今回のお仕事は、時間をかけてお話させていただくことで 、じっくりと作り上げることができたと思っています。

加藤:僕も納得したものを作りたかったので、わからないところは絶対に机上論で終わらせず、現場に足を運んで実際に目で見て決めるようにしていました。とくに2階の内装は「現場合わせ」の仕事です。

佐藤:テーブルも一緒に作りましたね。

加藤:そうそう! 既存のテーブルではピンとこず、おまけに終盤で予算もギリギリで……(苦笑)。一緒に作ってもらいました。高い天井を生かしてラウンジのような落ち着いた雰囲気にしたいと思ったので、席数は少なめ。もう少し増やしてもいいんですけれど、居心地の良い空間にはそういうアソビのスペースが大事だと思ったので。

佐藤:余白は本当に大事ですよ! 余白にこだわればこだわるほど、オンリーワンになる。効率や売り上げを求めることはもちろんできるのでしょうけれど、それじゃあ味気がないし、何度も足を運んでもらえるお店になるには、やはり「お客様がどう感じるか」、そこが一番大切。どれだけ良い空間を作るか、というのは余白をもたせつつ、その中で最大限の売上が立つように設計するか。 そこが鍵だと思っています。

加藤:先日も予約のお客様の方から、「店のレイアウトをこうしたい」とご提案くださったんですよ。そうやって、いろいろな使い方を楽しんでほしい。

佐藤:空間に魅力があるとやはり面白い人が集まります。お客さんだけでなく、スタッフも……。

「同じ目線で考えてくれるから、期待を裏切らない。

加藤:今回クリアデザインさんとは 、依頼主と施工会社という関係から始まりましたが、ビジネスの枠を超えて、一緒にモノづくりを楽しむ仲間が増えたという感覚です。楽しかったですね、本当に。

佐藤:加藤さんの第一印象は「人生経験が豊富で、いろいろな遊びを知ってそうな方」というイメージで、いろいろなモノを見て、触れて、何が良いモノかを知っている方という印象でした。だからこそプレッシャーに感じていました。

加藤:ははは、ありがとうございます。

佐藤:一緒にお店作りをさせていただいて、本当に楽しい方だとわかりましたね。話せば話すほど、深い人。幅も、深さもある方ですね。

加藤:佐藤さんは、物腰柔らかく優しく、そして期待を裏切らない。ただ図面を引いて施工をするだけでなく、まとまりきっていない思考をスッキリさせてくれて、一緒に考えてくれるんですよね。今、デザインや設計のパートナー選びで悩んだり、迷っている方は、まず佐藤さんに相談して見ると、自分のやりたいことが鮮明になると思います。

佐藤:おお、嬉しい。ありがとうございます。

加藤:自分の中で理想のイメージが固まっていなかったとしても、自分と同じ目線で一緒に考えてくれるのが佐藤さん。だから今回もブレなくて済んだと思っています。モノづくりを一緒に考え、楽しんでくれるパートナーさんと仕事ができたことで、店がオープンする前からワクワクしっぱなしでした。本当にありがとうございました。今度サーフィン行きましょうね!

店舗情報

店舗名:GRINHOUSE Daily dining (グリンハウスデイリーダイニング)
連絡先:050-5596-7920
住所:神奈川県横浜市神奈川区金港町6-5
公式HP:https://gurinnhausuyokohama.gorp.jp/