COLUMNコラム
夏の飲食店づくりで重要な「冷房設定温度」の考え方
夏場の飲食店では、料理やサービスと同じくらい「店内の空調管理」が重要なポイントです。
料理がどれだけおいしくても、店内が暑すぎればお客様は食欲が減退し、逆に寒すぎれば滞在が短くなったり、体調を崩されたりするリスクもあります。
飲食店を開業する際には、料理やインテリアと同じように、冷房の設定温度にも気を配ることが求められます。
この記事では、冷房の適切な温度設定と、空調に関するトラブルを避けるための工夫についてご紹介します。これから店舗づくりを始めるオーナー様は、ぜひ参考にしてみてください。
基準はあるけど、「飲食店」にそのまま当てはまらない?
環境省では、夏場の室内温度の目安として「28度」を推奨しています。ただしこれは主にオフィスや住宅での目安であり、飲食店では事情が異なります。
たとえば、鉄板焼きや中華料理店など調理で強い熱を発する店舗では、客席まで熱気が伝わりやすいため、設定温度は26〜27度程度に抑えると快適です。逆に、長時間の滞在が多いカフェや喫茶店などでは、冷えすぎないよう自宅に近い温度(27〜28度)を目安にするのがおすすめです。
また、来店される客層によっても体感温度は大きく異なります。女性や高齢のお客様は、筋肉量や代謝の関係で寒さを感じやすい傾向があります。こうした層が多い店舗では、冷房の効かせすぎには注意が必要です。
設計段階で考えておきたい空調計画のポイント
快適な空調環境は、オープン後の運営で対応するだけでなく、設計段階からしっかり計画しておくことが重要です。以下に、飲食店設計時に意識しておきたいポイントをいくつか挙げます。
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空調機器の配置と風の流れの設計
エアコンの風が直接お客様に当たらないよう、風向きを計算して設置位置を調整します。ダクトや吹き出し口の向きも工夫し、風が均等に行き渡るように設計することが大切です。 -
ゾーニングによる空調のコントロール
厨房と客席で温度差が大きくなる場合は、空間を緩やかに分けたり、エアカーテンを導入したりして、冷気や熱気の影響を軽減しましょう。 -
換気計画とのバランス
空調と換気はセットで考えるべき要素です。外気の取り入れ方や排気の流れを意識して、気流のバランスが崩れないようにすることが、快適な空間づくりにつながります。 -
天井高や内装素材も快適性に影響
天井が高すぎると冷気が上部にたまり、逆に効きづらくなってしまう場合もあります。断熱材の選定や、熱を逃がしにくい窓周りの工夫なども効果的です。
こうした設計段階での対策を講じておくことで、冷房に頼りすぎずに快適な空間を維持できる飲食店になります。
空調トラブルを避けるちょっとした工夫
飲食店では席ごとに温度調整ができないため、店内すべてのお客様にとって快適な状態を保つのは簡単ではありません。そんなときには、以下のような工夫で対応することができます。
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空調機の風が直接当たらない席を案内:寒さを感じるお客様には、空調から離れた場所や風の当たりにくい席にご案内しましょう。
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ブランケットやひざ掛けの貸し出し:冷えを感じる方向けに、無料でブランケットを提供することで、気配りのある印象を与えることができます。
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温かい飲み物のサービス:冷房が苦手な方には、温かいお茶などを提供することで、身体の冷えをやわらげることができます。
こうしたちょっとした対応でも、お客様の満足度が大きく変わります。
快適な空調は、リピーターにつながる要素のひとつ
店内温度が快適かどうかは、お客様がリピートしたいと感じるかどうかに直結するポイントです。とくに夏場は、気温や湿度の変化が激しく、開業後もこまめな空調の見直しが必要です。スタッフの体感やお客様の反応を日々チェックしながら、最適な環境づくりを続けましょう。
店舗設計のクリアデザインでは、東京渋谷区を拠点に、飲食店の設計・施工を一貫して手がけています。冷房機器の配置や空調の効き方まで考慮した、機能的で快適な空間づくりをサポートいたします。
飲食店の開業をお考えのオーナー様は、ぜひお気軽にご相談ください。