COLUMNコラム
インバウンド対策を考える。飲食店を英語対応にするメリットと準備の進め方
訪日外国人旅行者はコロナ禍を経て大きく回復し、2025年の年間訪日外客数は4,268万3,600人となり、過去最高を更新しました。2024年の3,687万148人を上回り、初めて4,000万人を超えています。
また、観光庁の2025年暦年調査では、訪日外国人旅行消費額のうち飲食費は全体の21.9%を占めており、宿泊費、買物代に続く大きな支出項目となっています。
さらに、日本に住む在留外国人数も2025年末時点で412万5,395人となり、初めて400万人を超えました。観光客だけでなく、日本で暮らす外国人のお客様にとっても、飲食店の多言語対応は利用しやすさにつながります。
つまり、インバウンド対応は一部の観光地だけの話ではなく、都市部の飲食店や駅周辺、商業施設、住宅地の店舗でも考えておきたい要素になっています。これから飲食店開業をお考えのオーナー様は、ぜひ本記事をご参考ください。
英語対応は「完璧に話すこと」だけではない
飲食店の英語対応と聞くと、英語を流ちょうに話せるスタッフを採用しなければならないと感じる方もいるかもしれません。
もちろん英語で接客できるスタッフがいれば心強いですが、すべての店舗で最初から十分な人材をそろえるのは簡単ではありません。大切なのは、外国人のお客様が不安を感じやすい場面を減らすことです。
たとえば、メニューの内容がわかること、注文方法が伝わること、支払い方法が見えること、アレルギーや宗教上食べられない食材を確認できること。こうした情報が店内に整理されているだけでも、お客様にとっては入りやすい飲食店になります。
英語対応は、会話力だけでなく、メニュー、看板、案内表示、動線、会計まわりまで含めて考えることが重要です。
飲食店を英語対応にするメリット
外国人のお客様が入店しやすくなる
外国人のお客様にとって、初めて入る飲食店では「何のお店なのか」「どのくらいの価格なのか」「注文の仕方は難しくないか」という不安があります。
店頭に英語表記のメニューや写真付きメニューがあるだけで、お店の内容が伝わりやすくなります。外から見たときに、英語メニューあり、キャッシュレス対応あり、ベジタリアン対応可などの情報がわかれば、入店前の迷いを減らすことができます。
特に路面店や繁華街、観光客の多いエリアでは、店頭の数秒の印象が来店につながることもあります。外観や看板のデザインとあわせて、多言語の見せ方を考えておくとよいでしょう。
メニューの魅力を正しく伝えやすくなる
日本の飲食店には、海外のお客様にとって名前だけでは想像しにくい料理が多くあります。
たとえば、親子丼、だし巻き卵、もつ煮、焼き鳥の部位、季節の小鉢などは、日本語の料理名をそのまま英語にしても内容が伝わりにくいことがあります。
そのような場合は、料理名を直訳するだけでなく、食材や調理方法を簡単に添えることが大切です。
たとえば、オムライスであれば「Omelet over ketchup-flavored rice」のように説明を加えると、どのような料理かイメージしやすくなります。焼き鳥であれば、chicken thigh、chicken skin、chicken meatballなど、部位や素材を明記すると注文しやすくなります。
写真、短い英語説明、辛さや量の目安を組み合わせることで、お客様が安心して選べるメニューになります。
アレルギーや食の制限によるトラブルを減らせる
インバウンド対応で特に注意したいのが、アレルギーや食材に関する確認です。
小麦、卵、乳製品、えび、かに、ナッツ類などのアレルギーに加えて、ベジタリアン、ヴィーガン、ハラール、ポークフリーなど、食の制限に配慮が必要なケースもあります。
すべてに対応できる必要はありませんが、対応できることとできないことを明確に伝えることが大切です。
「この料理には豚肉が入っています」「スープに魚のだしを使用しています」「同じ厨房で調理しています」といった情報を英語で伝えられるようにしておくと、スタッフも説明しやすくなります。
これは外国人のお客様のためだけでなく、店舗側を守るためにも重要な準備です。
口コミやSNSで広がるきっかけになる
訪日外国人のお客様は、GoogleマップやSNS、旅行サイトを見て飲食店を探すことが多くあります。
英語メニューがある、スタッフが親切だった、注文しやすかった、食材説明がわかりやすかったという体験は、口コミとして残りやすい要素です。反対に、言葉が通じず不安だった、メニュー内容がわからなかった、支払い方法がわかりにくかったという体験も投稿される可能性があります。
英語対応は、単にその場の接客をスムーズにするだけでなく、次のお客様にお店を知ってもらうきっかけにもなります。
英語対応で準備しておきたいポイント
写真付きの英語メニューを用意する
飲食店で最初に取り組みやすいのは、写真付きの英語メニューです。
料理写真があると、言葉だけでは伝わりにくい内容も直感的に理解してもらえます。英語表記では、料理名だけでなく、主な食材、辛さ、量、調理方法、食べ方を短く添えると親切です。
また、紙メニューだけでなく、QRコードで多言語メニューを見られるようにする方法もあります。メニュー変更が多い店舗では、デジタルメニューの方が更新しやすい場合もあります。
ただし、QRコードだけに頼ると、通信環境やスマートフォンの操作に不安があるお客様には使いづらいことがあります。店頭用、席用、会計用など、使う場所に合わせて見せ方を分けるとよいでしょう。
店内サインをわかりやすくする
英語対応では、メニューだけでなく店内サインも大切です。
入口、受付、トイレ、会計、禁煙、セルフサービス、食器返却口などの案内がわかりやすいと、お客様はスタッフに何度も確認しなくても行動できます。
観光庁も、訪日外国人旅行者が快適に移動・滞在できる環境整備として、多言語による案内表示の充実を掲げています。
飲食店の場合も、店内で迷いやすい場所を減らすことで、スタッフの負担軽減にもつながります。
支払い方法を店頭で伝える
外国人のお客様にとって、支払い方法は来店前に確認したい情報のひとつです。
クレジットカード、タッチ決済、QRコード決済、現金のみなど、対応している支払い方法を店頭やレジ付近にわかりやすく表示しておきましょう。
特に観光客が多いエリアでは、キャッシュレス対応の有無が入店判断に影響することがあります。対応している決済ブランドを入口付近に掲示しておくと、会計時のやり取りもスムーズになります。
スタッフが使う英語フレーズを決めておく
英語対応では、難しい表現を覚えるよりも、店舗でよく使う言葉を決めておくことが現実的です。
たとえば、以下のような短いフレーズだけでも接客の流れを作りやすくなります。
How many people are in your party?
何名様ですか?
Do you have a reservation?
ご予約はありますか?
Please wait here.
こちらでお待ちください。
Are you ready to order?
ご注文はお決まりですか?
This dish contains pork.
この料理には豚肉が入っています。
This dish is spicy.
この料理は辛いです。
Please pay at the cashier.
お会計はレジでお願いします。
One moment, please.
少々お待ちください。
Thank you. Enjoy your meal.
ありがとうございます。ごゆっくりどうぞ。
スタッフ全員が同じ言い回しを使えるようにしておくと、接客のばらつきも減らせます。厨房やレジ周辺に簡単なフレーズ表を貼っておくのもよい方法です。
店舗設計の段階からインバウンド対応を考える
英語対応は、開業後にメニューだけを追加すればよいというものではありません。
店舗設計の段階から考えておくことで、より自然な形でお客様を案内できます。たとえば、入口付近にメニューを掲示できるスペースを作る、待合スペースに案内表示を置く、レジまわりに支払い方法を見せる、客席からスタッフを呼びやすい動線にするなど、設計で解決できることは多くあります。
また、外国人のお客様は大きな荷物を持って来店することもあります。観光地や駅近くの飲食店では、スーツケースを置けるスペースや、通路幅の確保も検討しておきたいポイントです。
東京渋谷区を拠点におく設計事務所に相談する場合は、デザイン性だけでなく、インバウンドのお客様がどこで迷いやすいか、どの情報を先に見せるべきかまで相談できると安心です。
まとめ
インバウンド需要は回復を超えて拡大しており、飲食店にとって英語対応は特別な取り組みではなく、これからの店舗づくりで考えておきたい基本的な準備になっています。英語を完璧に話せなくても、写真付きメニュー、店内サイン、食材説明、支払い方法の表示、簡単な接客フレーズを整えることで、外国人のお客様にとって利用しやすいお店に近づけます。
飲食店のインバウンド対策は、接客だけでなく店舗設計とも深く関わります。入口で何を見せるか、メニューをどこに置くか、レジや客席までどのように案内するかを考えることで、お客様にもスタッフにもやさしい空間になります。
店舗設計のクリアデザインは、東京渋谷区を拠点におく設計事務所として、飲食店のコンセプトづくりから内装デザイン、動線計画、店頭の見せ方まで、オーナー様の想いに寄り添った店舗設計をご提案しています。インバウンド対応を見据えた飲食店づくりについても、業態や立地に合わせて無理のない形で計画することが大切です。
無料でご相談も承っておりますので、店舗設計に強い設計事務所をお探しのオーナー様は、ぜひ一度クリアデザインまでご相談ください。