COLUMNコラム
飲食店の開業資金の考え方|出店計画前の心得
飲食店を開業する際、多くのオーナー様が最初に気になるのが「開業資金はいくら必要なのか」という点ではないでしょうか。
ただし、飲食店の開業資金は、物件の立地や広さ、業態、厨房設備、内装デザインの内容によって大きく変わります。カフェ、居酒屋、レストラン、ラーメン店、テイクアウト専門店では、必要な厨房機器や客席数、工事内容が異なるため、一律で判断することはできません。
日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査では、全業種における開業費用の平均値は970万円、中央値は600万円となっています。また、開業時の資金調達額は平均1,219万円で、そのうち金融機関等からの借り入れが平均827万円、自己資金が平均279万円とされています。飲食店・宿泊業は開業業種の14.5%を占めており、開業者の中でも一定の割合を占める業種です。
飲食店開業では、総額だけを見るのではなく「何に、どのタイミングで、どれくらい必要になるのか」を分けて考えることが大切です。これから飲食店開業をお考えのオーナー様は、ぜひ本記事をご参考ください。
飲食店の開業資金は大きく3つに分けて考える
飲食店の開業資金は、大きく分けると「物件取得費用」「内装工事・設備費用」「運転資金」の3つです。
この3つを分けずに考えてしまうと、物件契約時に想定以上の費用がかかったり、内装工事の途中で予算が足りなくなったり、開業後の売上が安定する前に資金繰りが苦しくなることがあります。
特に飲食店は、開業前にまとまった支払いが発生しやすい業種です。物件契約、設計、工事、厨房設備、家具、照明、看板、備品、採用、広告など、営業開始前から多くの費用が必要になります。
そのため、出店計画を立てる段階では「開業までに必要な資金」と「開業後に残しておく資金」を分けて考えることが重要です。
物件取得費用は契約条件によって大きく変わる
物件取得費用とは、店舗物件を借りるために必要となる費用です。
主な項目としては、保証金、敷金、礼金、仲介手数料、前家賃、火災保険料などがあります。居抜き物件を選ぶ場合は、前の店舗の設備や内装を引き継ぐための造作譲渡費が発生することもあります。
住居用の賃貸物件と違い、店舗物件では保証金が大きくなる傾向があります。駅前、繁華街、路面店、商業施設内など、人通りが多く集客が見込める物件ほど、初期費用も高くなりやすいです。
また、家賃だけを見て判断するのは注意が必要です。たとえば、家賃が少し高くても視認性が良く集客しやすい物件もあれば、家賃は安くても看板が出しにくく、お客様に見つけてもらいにくい物件もあります。
飲食店の物件選びでは、初期費用、月々の家賃、立地の集客力、工事のしやすさを合わせて確認する必要があります。
居抜き物件は安く見えても確認が必要
飲食店開業では、初期費用を抑える方法として居抜き物件を検討するオーナー様も多いです。
居抜き物件は、前の店舗の厨房設備、カウンター、空調、ダクト、客席、トイレなどを引き継げる場合があり、スケルトン物件よりも工事費を抑えやすいことがあります。
ただし、必ずしも居抜き物件が安く済むとは限りません。
前店舗と業態が大きく違う場合、厨房レイアウトを変更する必要があります。古い設備の交換、排気や給排水の見直し、電気容量の不足、グリストラップの確認、空調の入れ替えなどが必要になると、結果的に大きな工事費がかかることもあります。
たとえば、軽食中心のカフェ跡地で本格的な中華料理店を開業する場合、火力、排気、油対策、厨房面積が足りない可能性があります。反対に、同じような業態であれば、既存設備を活かして費用を抑えられるケースもあります。
居抜き物件を検討する際は、内見時の見た目だけでなく、設備の状態や営業許可に必要な条件を専門家と確認しておくことが大切です。
内装工事・設備費用はコンセプトと直結する
内装工事・設備費用は、飲食店の開業資金の中でも大きな割合を占めやすい項目です。
主な内容には、厨房工事、給排水工事、電気工事、ガス工事、空調工事、排気ダクト工事、客席内装、床・壁・天井、照明、家具、看板、トイレ、レジまわりなどがあります。
飲食店の場合、見た目のデザインだけでなく、厨房の使いやすさ、スタッフ動線、客席数、回転率、清掃のしやすさ、安全性も考えなければなりません。
内装費を抑えたいからといって、必要な厨房設備や動線計画まで削ってしまうと、開業後の営業効率が悪くなることがあります。反対に、デザインに費用をかけすぎると、開業後の運転資金が不足する可能性もあります。
店舗設計では、限られた予算の中で「どこに費用をかけるべきか」「どこを工夫して抑えるか」を整理することが大切です。
工事費は以前より余裕を持って見ておく
近年は、建築資材や設備、職人の人件費などの影響により、工事費を以前の感覚だけで見積もるのが難しくなっています。
国土交通省は、建設工事費の動きを把握する指標として建設工事費デフレーターを公表しています。これは建設工事に関する費用の変動を示す統計で、工事費の上昇傾向を確認する際の参考になります。
飲食店の内装工事でも、厨房機器、空調設備、照明、木材、金属、タイル、ガラスなど、さまざまな資材や設備を使います。見積もりを取る時期や工事内容によって金額が変わることもあるため、開業資金には予備費を含めて考えておくと安心です。
特に、スケルトン物件から飲食店をつくる場合は、給排水、ガス、電気、排気、空調などの設備工事が大きくなりやすいです。物件契約前に、希望する業態がその物件で無理なく実現できるかを確認しておきましょう。
運転資金は開業後の安心材料になる
運転資金とは、開業後に店舗を運営していくために必要な資金です。
主な項目としては、家賃、人件費、食材仕入れ、光熱費、通信費、広告費、消耗品費、リース料、借入返済などがあります。
飲食店は、開業してすぐに売上が安定するとは限りません。オープン直後は話題性で来店が増えることもありますが、その後に客数が落ち着くこともあります。また、天候、季節、近隣環境、スタッフ採用、口コミの広がり方によって売上は変動します。
そのため、開業資金をすべて物件取得費や内装工事に使い切ってしまうのは危険です。開業後数か月分の運転資金を残しておくことで、売上が安定するまでの期間を乗り越えやすくなります。
目安としては、少なくとも3か月分、できれば6か月分程度の固定費を想定しておくと、余裕を持った経営判断がしやすくなります。
融資を使う場合は事業計画と見積もりが重要になる
飲食店開業では、自己資金だけでなく融資を組み合わせて資金計画を立てるケースが多くあります。
日本政策金融公庫では、新たに事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内の方を対象とした「新規開業・スタートアップ支援資金」が用意されています。資金の使いみちは、設備資金および運転資金で、融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内とされています。
融資を検討する際には、開業資金の総額だけでなく、資金の使い道を具体的に示すことが大切です。
物件取得にいくら、内装工事にいくら、厨房設備にいくら、運転資金としていくら残すのか。こうした内訳が整理されていると、事業計画に現実味が出ます。
また、売上計画についても、客単価、席数、回転数、営業日数、ランチとディナーの売上比率などをもとに考える必要があります。店舗設計の段階から席数や動線を整理しておくと、売上計画も立てやすくなります。
開業資金を考えるときに見落としやすい費用
飲食店の開業資金では、物件取得費や内装工事費のような大きな項目に目が向きがちですが、細かな費用も積み重なると大きな金額になります。
たとえば、食器、グラス、カトラリー、ユニフォーム、レジ、予約システム、メニュー表、ショップカード、清掃用品、ゴミ箱、音響設備、観葉植物、SNS用の撮影費、オープン告知費などです。
また、保健所の申請、消防設備、スタッフ募集、研修期間中の人件費、プレオープンの食材費なども必要になります。
特に、オープン前後は想定外の支出が出やすい時期です。看板の見え方を調整したい、客席に荷物置きを追加したい、照明の明るさを変えたい、店頭メニューを作り直したいといった細かな改善も発生します。
こうした費用を最初からある程度見込んでおくことで、開業後の負担を減らすことができます。
店舗設計で開業資金の使い方は変わる
飲食店の開業資金は、単に安く抑えればよいというものではありません。
大切なのは、店舗のコンセプトや営業スタイルに合った使い方をすることです。
たとえば、回転率を重視するラーメン店であれば、厨房から客席、会計までの動線を短くすることが重要です。ゆっくり過ごしてもらうカフェであれば、席の間隔、照明、音、素材感に費用をかける意味があります。居酒屋であれば、スタッフが料理やドリンクを運びやすい通路計画が売上にも影響します。
つまり、店舗設計は見た目を整えるだけでなく、開業資金をどこに使うべきかを判断するための土台になります。
まとめ
飲食店の開業資金は、物件取得費用、内装工事・設備費用、運転資金に分けて考えることが大切です。日本政策金融公庫の2025年度調査では、全業種の開業費用の平均値は970万円、中央値は600万円となっており、資金調達では金融機関等からの借り入れと自己資金が大きな割合を占めています。飲食店の場合は、業態や立地、厨房設備、内装デザインによって必要な金額が大きく変わるため、早い段階で具体的な内訳を整理しておくことが重要です。
開業資金を考える際には、初期費用を抑えることだけでなく、開業後に無理なく運営できる資金を残すことも必要です。物件選びや店舗設計の段階から、工事費、設備費、運転資金のバランスを見ておくことで、開業後の営業もしやすくなります。
店舗設計のクリアデザインは、東京渋谷区を拠点におく設計事務所として、飲食店のコンセプトづくりから物件の見方、内装デザイン、厨房・客席の動線計画まで、オーナー様の理想と予算のバランスを考えた店舗設計をご提案しています。開業資金の使い方に迷う段階からご相談いただくことで、無理のない出店計画を立てやすくなります。
無料でご相談も承っておりますので、店舗設計に強い設計事務所をお探しのオーナー様は、ぜひ一度クリアデザインまでご相談ください。